「くまのプーさん」は、ディズニーの中でもっとも愛されているキャラクターの一つでしょう。
英語名(むしろ本名だけど)は、「Winnie-the-Pooh」。
モデルはカナダの子グマで、Winnieはカナダ中部の都市ウィニペグに因んでいるということは、日本ではあまり知られていません。
サドバリー(Sudbury)〜ホワイトリバー(White River)をつなぐ支線は、観光客の利用はほとんどなく、特に話題にのぼることもありません。空港がなく、バスや鉄道でも極めて不便な町「ホワイトリバー」こそがプーさんのふるさとです。
いまは週に3便しか列車が走らないローカル線ですが、大陸横断鉄道の一部であり、かつてカナダの東西を移動する人のほとんどがこの路線を通りました。
時は第一次世界大戦、カナダはヨーロッパ戦線に参加し、たくさんの兵隊や物資が鉄道によって運ばれました。戦車が普及する前のことで、馬も重要な軍事力として戦場へと送り込まれたのですが、馬の輸送には途中で長時間の休憩をはさみ、散歩させたりして消耗を防ぐ必要がありました。
当時のホワイトリバーは、機関車に水と石炭の補給するために全列車が長時間停車する大陸横断鉄道の要所でした。列車が長時間停まるので、馬の休憩にも最適な場所の一つでした。
馬の管理を専門とする兵隊の一人が、動物好きだったことは容易に想像できます。ホワイトリバーの街角で、近くの森で捕獲された子グマが売られているのを見つけ、$20で購入したのです(日記が残っています)。
ウィニペグから出征したこの兵隊(Colebourn)は、出身地に因んで子グマをWinnieと名付け、兵力の移動と同時に大陸横断鉄道で東海岸へ、さらにはイギリスに連れて行きました。人なつっこいWinnieが兵隊たちに人気だったことはいうまでもありません。
やがてColeburnはフランスの戦地への異動を命ぜられ、Winnieをロンドン動物園へ預けることにしました。もともとはカナダへ連れて戻る予定でしたが、その後ロンドン動物園で大人気となっているのを見て、Winnieを動物園に寄贈することにし、自身はカナダへ戻りました。
ロンドン動物園でのWinnieはとりわけ子供達に人気でした。
Winnieが好きな子供の一人が、自分のクマのぬいぐるみをWinnie-the-Poohと名付けました(Poohはその子が当時飼っていた白鳥の名前)。この子供の親が童話作家であり、Winnie-the-Poohという物語の連載を、愛嬌あふれるWinnieと息子、息子のぬいぐるみを題材として開始します。やがて誰もが知る「絵」が加わり、さらに人気を博しました。
ディズニーのキャラクターになるのはずっと後のことで、1961年にディズニーに版権が購入されました。
毎年8月の第3週末には、「ウィニーのふるさと祭り(Winnie’s hometown festival)」が開催されます。また、ホワイトリバーの博物館には、プーさんのエピソードが展示されています。ディズニー好きな人も、そうでない人も、この小さな町を訪れてみてはいかがでしょうか。